ビンテージ/Official髭男dism 歌詞解釈 勝手に
最近、Official髭男dismをまあよく聞いています。
歌唱力、作詞作曲、ライブ演出、演奏、どれをとっても高水準な希有なバンドだと思います。
ボーカルの藤原聡はまず天才と言って間違いないと思う。
お膳立てはこれにて。
今回はOfficial髭男dismの『ビンテージ』の歌詞解釈をしていきます。
割と新しめの曲なのかな?確かアルバム収録曲だったはずです。違ってたらごペンなさい。
ラブソングとなっております。そんなに難しい歌詞じゃないので、解釈のパターンも限られてくると思いますが、久々の歌詞解釈なのでこのくらいの難易度が丁度良いかなと思います。
コブクロの流星の後半を挙げていないことにさっき気付きました…そのうち挙げます…。
全体を通して
「ビンテージ」ってどんな意味でしょう。
年月が経って味がでてきたもの…みたいな意味があるそうです。ビンテージもののワインとか言いますね。長い月日をかけて熟成された…という意味でしょう。
この歌の歌詞は、「まだまだ思い出は少ないけど、これから二人で思い出を作って、いずれビンテージものになるといいね!」みたいな歌詞です。ごくごく簡単に言うとね。
細かい解釈はこれからしていきます。
『Pretender』と違ってポジティブで温かい歌になっており、髭dismの中でも比較的歌いやすいんじゃないかなと思います。かといってマイク片手に歌ってみると十中八九後悔すると思いますが…。
Aメロ
口喧嘩なんかしたくもないから
細心の注意を払って生きてた
率先して自分のことをけなすのは
楽だけど虚しくて
はい。
まあそのまんまの意味ですね。
「細心の注意を払って」っていう言葉選びに、髭dism味を感じますね。こう、ちょっと堅い表現と言いましょうか。『Pretender』でいうと「離れ難い」とかですね。
「率先して自分をけなす」とは、争いごとが起きないように、自分が下手に出るような生き方のことでしょう。自分を下げて相手を上げることで、確執を生まないようにしている感じです。
そんな生き方は「楽だけど虚しくて」。
争いごとが起きないから楽だけど、どこか虚しさを感じています…。
悲しい過去なんか1つもないのが
理想的だって価値観を持ってた
そんな僕は君という人に会えて
大事なことに気付かされた
彼女と出会う前までは、「悲しい過去なんか1つもないのが理想的だって価値観を持ってた」。自分をけなして生きることで、悲しい過去を作らないようにしていたのが冒頭の歌詞の意味だったんですね。
でも「君」に会ってから、その価値観は払拭され、もっと「大事なことに気付かされた」。
その「大事なこと」は、次のBメロに表れます。
Bメロ
キレイとは傷跡がないことじゃない
傷さえ愛しいというキセキだ
良い歌詞ですね。
Aメロの「悲しい過去」はBメロで言う「傷跡」。
主人公はそれまで、「悲しい過去(=傷跡)」なんかないのが理想的だと思っていたけど、それは違うことに気付かされました。
「悲しい過去(=傷跡)」はあってもいい。その「傷跡」さえ愛しいと思えることが何より尊いことなんだ。
そう気付かされました。
どんな過去があっても、それを含めて全て君なんだよ。僕はそんな君が好きだし、そんな風に愛することができる君に出会えたことはキセキなのさ!と、歌っております。
特段、珍しいことは言ってません。ありきたりな内容です。
ただ、髭dismの場合は、絶妙な言葉選びと巧みなメロディラインを駆使しているので、痛々しさがありませんね。彼の才能はこういうところに見受けられます。
ちなみに、「キレイ」「キセキ」がカタカナなのは、タイトルの「ビンテージ」に合わせてつけたからでしょう。「ビンテージ」っていうと、カタカナの雰囲気がありますね。「ワイン」然り…。
サビ
酸いも甘いもって言えるほど
何も僕ら始まっちゃないけれど
褪せた思い出もビンテージなんて言って
振り返る度に笑えるようにと
大切に日々を重ねよう
かけがえのない今を
サビです。
「酸いも甘いもって言えるほど 何も僕ら始まっちゃないけれど」
「酸いも甘いもかみわける」という言葉がありますね。色々経験してきて、良いこと悪いこと全部知り尽くしてるよみたいな意味のある言葉です。
主人公と相手の方は、まだお付き合いを始めたばかりで、一緒に過ごした時間は短いけれども…の言い換えですかね。
「褪せた思い出もビンテージなんて言って 振り返る度に笑えるようにと」
タイトルが回収されます。
「褪せる」という言葉は、どうしてもマイナスの意味がありますね。「色褪せる」とか言います。時間が経って、みずみずしさとか美しさが失われるような状態です。
「褪せた思い出」とは、冒頭で出てきた「悲しい過去」「傷跡」のことも指しているでしょうし、これから二人で経験するであろう「未来の出来事」のことも指すでしょう。
恐らく、「過去」のこととこれからの「未来」のこと、その全てを指しているように俺には思えます。「何があっても」ってことでしょう。
何があっても、それらは時が経てば色褪せてしまうけれども、「ビンテージなんて言って」振り返ればいいね。と歌っています。
「褪せる」はマイナス的な表現ですが、「ビンテージ」と言い換えることでなんだかすごく雰囲気が良くなりますね。こういう言い換え表現は、作詞において常套手段です。素人の感想ですが。
「前髪が後退しているんじゃない、私が前進しているのだ」
これと一緒ですね。言い換えることで、ポジティブな印象を持たせています。
「大切に日々を重ねよう かけがえのない今を」
意味はそのままですが、個人的に「かけがえのない今を」という言葉を持ってくるあたりにセンスを感じました。
「悲しい過去」も「これから先の未来」も、いずれは色褪せてしまうけれど、そんなものは「ビンテージ」と言って笑い飛ばせる。だからとにかく、「今」を懸命に生きようぜ!という言い回しですね。
「今」という時間軸は、一瞬でかけがえのないものです。過去が色褪せてしまうかビンテージになるかは、「今」という時間の生き方次第だ、だからとにかく「今」を大切に重ねて生きていこうということが言いたいんでしょうね。
「今を」を裏声で歌い上げることで、かけがえのなさが表現されています。
2番Aメロ
好きな色なんか特段ないけど
人生が絵画だったならどうだろう?
君との時間を重ねることでしか
出せない色がきっと好きだ
場面は少し切り替わりますね。「褪せる」という単語から「色」を連想させて歌詞を思いついたのかも知れませんね。
絵画というものも、有名な画家の絵画は「何年経っても色褪せない名作」なんて言われたりしますね。そういう意味でも「絵画」という歌詞をチョイスしたのかもしれません。
「出せない色がきっと好きだ」の「きっと」がいいですね。
君との思い出はまだまだ少ないけど、大切なことに気付かせてくれた君と過ごすこれからの時間は、「きっと」楽しいに決まっている、というニュアンスが汲み取れます。こういうたった3文字の言葉を加えるだけで美しくなるのが日本語の素晴らしいところです。
2番Bメロ
喜怒哀楽 そしてその間に
きらめく想いを抱きしめて
これから共に過ごす中で、「喜怒哀楽」の様々な感情が露わになるでしょう。
でもそういう感情の間、共に過ごす時間の中には、「きらめく」瞬間が必ずあるから、その瞬間を大切に「抱きしめて」生きていこうというニュアンスですかね。
1番サビの「かけがえのない今を」の「かけがえのない」という言葉のニュアンスと似ています。そういう一瞬一瞬のきらめきを逃さないように抱きしめて生きていこうと誓う歌詞です。
2番Bメロ
シワくちゃだったり やけに錆びついたり
剥がれてしまった記憶があったとしても
何一つ隠し繕うことなく
それさえ愛しいというキセキだ
CメロなのかBメロなのか怪しいですが、一応Bメロに分類してみました。
1番のBメロと同じ内容の歌詞です。
「シワくちゃだったり やけに錆びついたり 剥がれてしまった記憶があったとしても」
これから様々な「記憶」が残っていくでしょう。その「記憶」は、あんまりよろしくないもので「シワくちゃだったり」、「錆びついたり」、「剥がれてしまった」りするでしょう。
「何一つ隠し繕うことなく それさえ愛しいというキセキだ」
どんな記憶でも、「何一つ隠し繕うこと」はしたくない。どんな記憶でも、すべてありのままに抱いておきたい。
どんなに良くない記憶でも、「それさえ愛しい」ことが「キセキ」なんだから。
1番Bメロの歌詞をより具体的に言い直している感じですかね。
要は、「何があってもそれら全てを愛しいと想えることが大切だし、そう思えることはキセキなんだよ!」ってことです。
君という人に出会えた事はキセキなんだよ、って意味にも取れますね。『Pretender』とは真逆の歌詞となっております。振り幅が広いですね、髭dismは。
2番サビは1番サビと同じなので省略します。
大サビ
そして増えた思い出がいつか星の数ほどに
溢れることがただ嬉しいから
今の心を歪まないように
例える言葉を 探してみるよ
連なってく日々の中を 君と重ねる今を
ラスサビで転調しますが、個人的にここは解釈が少し難しいです。
最初の2行はそのまんまですかね。
「そして増えた思い出がいつか星の数ほどに 溢れることがただ嬉しいから」
「そして」「ただ」という言葉のチョイスも美しいです。
「そして」は、「結局自分が一番嬉しいことは」のニュアンスで、「ただ」は、「それさえあれば後は何もいらない」というニュアンスを感じました。
「今の心を歪まないように 例える言葉を探してみるよ」
ここが少し悩みました。
「今の心が」ではなく「今の心を」なんですね。
「今の心を例える」という目的語の意味で「を」を使っているんでしょうけど、「今の心を」の直後に「歪まないように」とあるので少し日本語の解釈に迷いました。「歪む」というのが「心」のことを指しているとしたら「今の心を歪”め”ないように」じゃないと日本語としては少しおかしいですよね。
だとすると「歪む」は「心」のことではない…?
と思ったのですが、「今の心を、(歪まないように)例える言葉を」という風に見るとおかしくはないので、別に問題はないのかな?
「歪まないように」をコーラスのような立ち位置と考えると違和感がなくなりました。
『Pretender』でいう「それもこれもロマンスのさだめなら」的な立ち位置ですね。
歌詞の意味は、「思い出が募ることがただただ嬉しいから、どんな思い出も全てありのままに受け容れるというこの心のあり方がこの先ずっと変わらないように、何か言葉に例えてみるよ。その言葉を、この先の人生の中で探してみるよ」って感じですかね。
「連なってく日々の中を 君と重ねる今を」
最後に
「ビンテージ」、如何だったでしょうか。
前にやった『Pretender』とは全く違った歌詞の内容でしたね。王道ラブソングといったところ。
正直、最後の大サビの解釈はまだ開拓の余地がありそうです。今後「ビンテージ」を聴いていく中で新たな発見があったら追記したいと思います。
次はミスチルとか米津とか、難易度高めの歌詞解釈をしてみたい。
その前に流星をだな…。
過去に『Pretender』もやってます。
↓