むろくんこそが、素敵でワガママ

むろくんこそが、素敵でワガママ

「読む」以外のことは何も考えないでください。

僕、3年連続脈拍120オーバーの大記録を打ち立ててしまう…

 

 今日計ったら脈拍120超えてたわ…。

 

 

 

 

 御年22歳。大学4年生の俺の名前は、むろくん。日々葛藤との戦いの中で研鑽を積み、誰に勝つよりもまず己に勝つことを何よりも優先する男の中の男。22歳という若齢にして早くも悟りを開きつつあり、通常であればフレッシュであるはずの20代前半を冷たい砂の中で生きることで有名!

 

 

 今年はコロナウイルスの影響で大学で4月~5月に行われている定期健康診断が延期!時は流れ、11月にしてようやく、秋の健康診断の題目で開催!満を持して予約をもぎ取り、11月5日本日、大学の保健センターへ!

 

 

 いつもと違う手続き。ウイルス対策は万全!目に見えないモノと戦う点では、ある種BLEACHの第1巻ポエムみたいな感覚で健康診断を受ける覚悟は用意してきた!学生証もしっかり用意!

 

 さて、手続きド頭から、尿検査をしなきゃいけないことに!?いつもなら猶予があるのに、なぜかその場で採ることに!おいおい、家出る前に膀胱全部すっからかんのからっきしにしてきちゃったっつーの!出るかなぁ、出るかなぁ…。近くのトイレに潜り込み、おちんちんを放り出し、紙パックへ銃口を向けるとあら不思議!通常よりも少量ではあるけれど、しっかりおしっこが注がれていく有様!昨日シコっちゃったけど大丈夫かなぁ。一抹の不安と己の尿を胸に、いざ、健康診断へ!

 

 

 レントゲンは秒で終わったよ!担当医の見た目はまるで若齢ラッパー!患者が来るまで、バスの中でいったい一人で何をしてるんだろう?なんて想像を膨らませることはせず、次なる検診へ!

 

 

 次は身長体重!

 身長は1センチ縮んでた!ここまでくるともはや正常!縮まない方がおかしいことが科学的に証明される日は目の前まで来てるのかもしれない!?体重は見るの忘れたけど、たぶん減ってる!wフォートナイトのプレイ人口くらい減ってそう!ww

 

 

 お次は視力!

 先日初回免許更新をクリアしているから、0.7以上は保証されているという安心感!結果は両目とも0.9!うん、だいじょぶだいじょぶ!1.0に届かないところが、僕の人生っぽくていいと思う!!

 

 

 

 

 

 

 次は、問題の血圧測定である。

 俺は冷たい木枯らしを歯牙にもかけない薄着の袖を少し捲り、血圧計の中に細い右腕を挿入する。くぼんだ部分に肘を乗せ、いざ測定。腕が圧迫されるあの感覚は決して嫌ではなく、心地よさすら覚えてしまう始末。特殊な性癖が功を奏してか、血圧は高めの測定結果。この時点で脈拍はなんと130ジャスト。明らかに迫り来ている死から目を背けつつ、右腕はしっかり測定器の中。2回目の測定にて、血圧は正常値にまで降下。しかし脈拍はほぼ変わらず120台。

 

 あれれ?おかしいぞ。の表情で、担当のおばさんは不安そう。その顔は俺の顔だと言わんばかりの足取りで、最終チェックを司るおばさんのところに歩を進める。

 

 

「脈拍が高いね。緊張してる?」

 

 

 

 即席尿検査を難なくこなしたこの俺が、健康診断如きで緊張するはずもなかった。だが実は、このやり取りは去年も行われている。去年と一昨年も同じように脈拍が高めに出たのだ。詳しい値は覚えていない。その時にも、緊張しているかどうかを問われた。もしかしたら心のどこかで無意識に緊張しているのかもしれない…当初はそう思ったが、やはり即席尿検査を突破しているこの俺が、血圧測定で今更緊張する理由はなさそうに思えた。

 

 

 アルコール消毒をぶちかましながら、妙齢のおばさんに手動で脈を計ってもらうことに。これがもし若くてきれいなお姉さんだったら、脈拍は巡り巡ってお姉さんのお腹の胎動へと昇華していただろう。そんなことは考える余裕もなかった。

 

 おばさん測定による測定結果でも、脈拍は120オーバー。既に3回の測定により脈拍の平均値は120を優に超えていた。不安が徐々に募り始める。

 

 

 

 

 もともと、体力がなく、すぐに息切れしてしまうことは多かった。周りの男子に比べて、体が貧弱なのも自覚していた。しかし、生まれ持った持病なんかは特になかった。さらに言えば、脈拍がここまで高い値で出たのは、大学生になってからだ。中学や高校の定期健診では、記憶にないほど異常はなかった。だから、生まれつき体力がないことと、今回脈拍が高い値で出たこととでは、直接の因果関係はないように思える。

 

 

 

 

 選ばれし者のみが入室を許可される問診室に案内され、本日初の男性医師に問診を受ける。

 医師曰く、やはり脈拍が高いのは本当で、普通であれば100未満が正常であるようだ。俺に関しては、100を優に超える120オーバー。これは明らかに異常であった。

 またも、男性医師による手動脈拍測定が開始。本日4回目の測定。その時は120はなかったような気がしたが、それでも110はオーバーしていただろう。医師は少し神妙な面持ちで用紙に値を記入し、こう言った。

 

「普段の生活で激しい動悸がしたりはする?」

「しないです」

 

 俺はきっぱりと答えた。しないものはしないのだから。

 

「過去に病気はしてないよね?」

「特にしてないと思います」

 

 ここはきっぱりと断定はできなかった。俺は小学2年生のころに謎の病に侵され手術を受けている。それは一過性のもので、今の健康には何ら影響を与えていないことは自明だったが、やはり断定はできなかった。俺の悪い癖だ。だから俺は人狼が苦手だ。

 

「去年も高いよね」

「そうですね」

 

 やはり、2,3年連続で高いという事実は、素人の俺からしても、医師である彼からしても懸念点であるのだろう。

 

「大学に入ってからなんですよね…」

 

 俺がため息のごとくボソッと放ったその一言に、男性医師は応える。

 

「あ、そうなんだ」

 

 少しだけ医師の声のトーンが上がったように記憶している。これはおそらく、中学高校の健康診断では正常であったことを察しての反応だろう。つまり、生まれ持った異常や過去に何か異常をきたした経験はない…ということを彼は理解したのだ。これが医師の成せる業だ。

 

 

 パソコンへの打ち込みや用紙への記入を一通り終えると、男性医師は俺の目をしっかりと見ながら語り始めた。

 

「今日家に帰って計ってみてください。それでもし高いようなら、何かしらの疾患が隠れている可能性があるので、病院か大学の保健センターに行ってください」

 

 言葉尻は違うが、このような趣旨の発言をしていた。それまでパソコンや用紙に目を向けながら俺と会話していた彼が、俺の目をしっかりと見ながらこの言葉を吐き出したことを鑑みるに、俺の健康を気にかけてくれていることは明らかだった。

 

 その後、付き添いのおばさんに脈の計り方を教えてもらい、俺は何とも言えぬ足取りで帰路についた…。

 

 

 

 

 

 

 

 脈拍が高い原因が、緊張であれば一番いいだろう。

 だが問題は、原因が緊張によるものではなかった場合だ。この場合、俺の体に何らかの異常をきたしている可能性が高い。

 

 

 

 さて、俺は今、脈拍を計っている。厳密には自分で計った直後にこの文章を打っている。

 医師がしていたように、15秒間脈拍を計り、×4で数値を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 結果。

 

 

 

 

 22×4=88。

 

 

 

 

 

 

 

 正常で草。