むろくんこそが、素敵でワガママ

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「読む」以外のことは何も考えないでください。

普段アニメを見ない俺が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』で涙しちゃう話

 

 君たちは、ヴァイオレット・エヴァーガーデンをご存じか。アニメが好きな人なら当然知っているだろう。アニメを見ない人でも、名前くらいは聞いたことあるかもしれない。

 

 京都アニメーションによって制作されたアニメのことだ。京都アニメーションと言えばあの痛ましい事件が思い出されるが、確かその渦中にヴァイオレット・エヴァーガーデンの映画の制作が行われていたはずだ。とまあ、前途多難な作品。

 

 

 

 

 年を取ると、新しいことを始めたり、新しいものに興味を抱いたりすることが億劫になってくる。無論、たかが22年生きただけで年を取ったと言い張る気もないが、それでも中高生のころよりは俺もおとなしくなってしまったものだ。やはり、新しいものにのめり込むのにはそれなりの体力と根気が必要になっている。

 

 そんな俺が、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を見ようと思ったきっかけは、いったい何なのだろうと常々考える。新しいものにのめり込む体力と根気がないことに加えて、俺は普段アニメをほとんど見ない。話題沸騰中の鬼滅の刃も、アニメ・映画ともに未視聴だ。決して意地を張って見ない逆張りとかではなく、単純に興味が湧かないのだ。

 

 だが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、なぜか見てみたいと思った。一つ確実に言えることは、京都アニメーションの作画に魅了されたということだ。無機物に命を吹き込み、人の人生を変えることを生業にしている者たちの産物をこの目で見てみたいと思ったのだろう。それでいっても、なぜ今更なのかと問われると、言葉が出てこない。

 

 

 

 

 主人公がとにかく綺麗だなと感じたのも見ようと思ったきっかけかもしれない。この「綺麗」とは、いわゆる女性の見た目を褒めるときに使われる「綺麗」という意味もあるが、京都アニメーションの作画が織りなす「アニメ的な綺麗」という意味もあるだろう。アニメについて詳しいわけではないが、京都アニメーションが描くヴァイオレット・エヴァーガーデンの姿は、本当に生きているかのように感じられる。髪の毛一つ一つがDNAを受け継いでいるように感じ取れるのだ。

 

 

 

 

 あとは、個人的に涙活が好きというのもある。涙活とは、その名の通り「泣く活動」、つまり、感動する映画やアニメ、漫画や小説などを見て涙を流す行為のことだ。実際に涙を流す行為というのは、ストレス発散などにも直結するため、実は結構いいことづくめだったりする。

 

 

 とまあ、俺が『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を見ようと思ったきっかけを少し考えてみたが、正直なところきっかけなどどうでもいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 重要なのは、普段アニメをほとんど見ない俺が、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を見て感涙した、ということなのである。

 

 

 この作品について、簡単に説明しよう。ネタバレを含む

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、もともと小説が原作であり、それが京都アニメーションによってアニメ映像化された作品である。

 

 あらすじを簡単に。

 戦争の道具として利用されてきた感情を持たない少女は、心優しいギルベルト少佐に出会う。少佐は少女を道具として扱おうとはせず、一人の人間として彼女を慕い、「ヴァイオレット」と名前を与える。戦争の最中、ヴァイオレットと少佐は敵の攻撃により負傷。少佐は薄れゆく意識の中で、ヴァイオレットに「愛してる」と伝え、彼女を守って犠牲になってしまう。

 その後、ヴァイオレットは少佐の友人であるホッジンズ中佐に引き取られ、少佐からもらった「愛してる」の意味を知るために自動手記人形(通称ドール)として手紙の代筆業を行うことに。ドールとして生きる中で、ヴァイオレットは様々な感情を知っていくことになる…

 

 

 少し長めのあらすじ紹介。

 戦争の道具として扱われてきた少女…っていう設定は割とありがちな感じもする。ありがちって言うと言葉が悪いので、珍しくはない、と言い換えておこう。

 

 この作品の時代背景だが、文明としてはそこまで発展していない。車は登場していたが、電話などは登場していない。また、完全なファンタジー世界というわけでもないため、魔法とかが出てきたりもしない。日本で言うところの明治大正時代くらいかな?

 

 

 

 この作品の面白いところは、主人公ヴァイオレットが感情を持ってない(厳密に言うと、感情を知らない)ため、恩人であるギルベルト少佐が放った「愛してる」の意味が分からないという部分だろう。そしてそれを知るために、手紙の代筆を行うという部分だ。

 

 この『感情を知らない少女』の描き方が実に秀逸。また、ヴァイオレットの声優石川由衣さんの表現力もなかなかのものだ。

 

 また、今の時代、手紙の代筆と言うとピンとかもしれない。この作品の世界では、識字率が極めて低い。そのため、文字を書くことができる人間が少ないので、代筆屋が重宝される。文字が書けないけど手紙を送りたい…そんな人たちが毎日のようにヴァイオレットの元(ヴァイオレットが所属する会社)に現れ、代筆を頼みに来る。人の感情をくみ取ることができないヴァイオレットは、時に相手を怒らせてしまうことも…。

 

 相手の話している言葉から本当の気持ちをくみ取って手紙にする。それこそが自動手記人形(ドール)の使命であるのだが、感情を知らないヴァイオレットちゃんは当然これに苦戦してしまう。

 

 相手の気持ちがなかなかくみ取れないヴァイオレットちゃん。そんな彼女は、ある日一流のドールを目指す少女に出会うのだが、彼女との出会いの中でヴァイオレットちゃんは一通の手紙をしたためることになる。これがきっかけで、ヴァイオレットちゃんが徐々に感情を理解していくようになる。

 

 

 

 最初は無表情だったヴァイオレットちゃんは、様々な代筆業をこなす中で徐々に感情的になっていく。この様が本当によく描かれてる。

 

 話が進んでいくにつれてヴァイオレットちゃんはたまに笑ったりするようになって、なんだかこっちまで嬉しくなってしまうほど。

 

 

 

 だけど、時にヴァイオレットちゃんが泣いてしまうこともあって。その時の「ヴァイオレットちゃん泣かないで」感は以上。ヴァイオレットちゃんの涙を見るのがだんだんつらくなる。

 

 

 

 そして話が半分くらい進んだところで、ヴァイオレットちゃんにとって衝撃の事実が発覚してしまい、ヴァイオレットちゃんは自分が生きる意味すら失いかけてしまう。

 

 そんな彼女に、会社の社長であり少佐の友人でもあったホッジンズが、こんな言葉を投げかける。

 

 

 

 

 

 

「してきたことは消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ。ヴァイオレット・エヴァーガーデン

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで泣いてしまった。何が泣けるって、3つある。

 まず一つ、このセリフの意味。ヴァイオレットは過去に戦争の道具として利用され、数多くの人の命を奪ってきた。当然、それをよしと思わない人もいる。いくら今自動手記人形として人のためになっていたとしても、過去の汚点は消えない。作中ではこれを「やけど」と比喩している。「人を殺したその手で、人を結ぶ手紙を書くのか?」なんて厳しい言葉が投げかけられるシーンも…。

 しかし、ヴァイオレットが自動手記人形として書いた手紙で救われた人も少なからずいた。これがアニメの前半で描かれる部分。

 

 「君は過去に多くの命を奪ってきた。その事実は消えないけど、その後君が自動手記人形として誰かの人生を変えてあげた事実も消えない」ということですね。

 

 二つ目は、このセリフを言うタイミング

 このアニメ、全体を通してある特徴があげられる。それは、それぞれの話の「タイトル」が、キャラクターが最後に放ったセリフになっているということ(例外あり)。例えば第4話では、少佐がヴァイオレットに名前を与えるシーンで最後に放つセリフ「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」がそのまま第4話のタイトルになっており、セリフと同時に黒背景に白文字でタイトルが表示されて話が終わる演出がなされる。

 このホッジンズのセリフの最後の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も、同じように第9話のタイトルになっている。

 個人的にこれは第4話のタイトルとつながりがあるように感じていて、ヴァイオレットちゃんがその名にふさわしい行いをしてきたことを、ホッジンズがヴァイオレット・エヴァーガーデンと名前を呼ぶことで表しているのではないかと。そしてそれを最後にタイトルにもってくる演出で涙しました、はい。

 

 

 三つ目は、子安武人の声。

 子安武人と言えば個人的にDIO様のイメージがかなり強い。「無駄無駄」だの「ロードローラー」だの言ってた人が、こんなシリアスで感動的な名シーンを演じるわけだが…。

 やっぱ声優ってすげえなと思わせる。ギャップ的な部分での感動もあるのかもしれないが、本当になんて温かい声が出せるんだろうと感心してしまうくらいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 と、ワンシーンでこんなに綴ってしまった。

 もっと語りたいことはあるのだが、長くなるのでこの辺で締めよう。

 

 

 

 

 

 とにかく、泣きたい人にはおすすめの作品。

 お涙頂戴作品と言われれば確かにその通りなのだが、京都アニメーションの秀麗な作画と声優陣の名演技、そして秀逸な演出によって想像以上の感動が得られる。

 

 

 「愛」と「言葉」。これに興味がある人は、見てみてもいいかもしれん。