ゴキブリとの邂逅
えー、皆さんどうもこんにちは。むろくんです。
いつも、ブログを読んでくださっている方、まあ愛読者がいるかどうかは定かではありませんが、いつもありがとうございます。
そして、今回たまたまこの記事に目を通してくださった方々、本当に心から感謝致します。皆様が記事に足を運んでくださり、一つでも多くアクセス数が増えることが、日々の僕の励みになっております。
毎日更新をすると決めてからは、一人称には特に気をつけるようにしているんですが、今日は畏まらざるを得ないということで、「僕」で一貫させて頂きます。
まあ、タイトルを見ていただければ今回の記事の内容は把握できるんじゃないかと思います。タイトルを見て、アクセスしてくださったという方もいるのではないでしょうか。
なぜこんなに前振りが堅く長いかと言うと、僕自身、未だに信じられないでいるというのが一番の理由です。
もう、キーボードを打つ手が止まりません。今はとにかくこの感覚を、言葉にすることでしか僕は救われないんです。
11月30日、現在時刻は5時59分です。この記事自体は昼の12時に予約投稿されていると思いますが…。
11月最終日。1年もあと1ヶ月で終わるところまで差し迫って参りました。何かが終わるということは、何かが始まるということ。2019年が終わるということは、2020年が始まるということです。
3月は別れの季節。4月は出会いの季節。
台風の後は、快晴がおとずれる。
はじまりとおわりは、親戚です。それも、とっても近い間柄。名前で呼び合うくらいの間柄です。夫婦か、兄弟か、親子か。とっても密接。
僕は今日、それをひしひしと感じました。
ヤツとの邂逅を果たしたことで、僕の平穏な日々は鳥のさえずりを聞く間もなく終わり、不安との戦いが始まるのです。
今日、僕の家にゴキブリが出た。
何のひねりもないこの一文を笑ってもらって構いません。そのままの意味です。「今日」「僕」「家」「ゴキブリ」「出た」「。」そして各助詞の意味が分かっていれば、この言葉の意味を理解することは難しくはないでしょう。
言葉を使って伝えるためには、聞き手が言葉の意味を知っていなければいけない。だから僕はあえて、とても簡単な言葉と、とても簡単な表現を駆使して、文字にしています。
もう一度だけ言わせてください。僕を信じさせてください。
今日、僕の家にゴキブリが出た。
は?
5時半くらいだったでしょうか。”いつものように”眠れぬまま明け方を迎えていた僕がいました。この季節に、5時半になったくらいで世界を明け方呼ばわりするのはどうかと思いますけどね。そう、この季節に…
PCを開いて、ダウンタウンのトーク動画を見ていました。何回も見たことがある動画です。暇さえあれば見ています。
ふ と
どのくらいの速度だったかな。視野角でいうと…60度くらいですね、右に。
テーブルの上にパソコンを置いているのですが、僕のすぐ右手側は壁になっています。なので、すぐ右側に目を動かすと、そこはすぐ、白いんですね、壁だから。
白。
ナニモノにも染まる純粋な色。世界で唯一、色を持たぬ色。僕はそう思うんです。
だから、そこに「白」以外の何かが重なれば、自ずと、その何かに目を奪われます。色を持たぬ色の上に、確かな色が重なれば、目を奪われます。
確かに目を奪われました。饒舌な政治家のように良く通る松本人志の声が、どこか遠くで鳴っているような感覚に見舞われました。
丁度、座っている僕と同じ高さくらいでした。
白い壁に、縦に長く濃い色のソレは、紛れもなく不自然に、だけど自然に付着していました。
お前は誰だ。
心の中の問いに答えてくれるほど、そいつは面白くはありません。
面の黒いそいつを、人はゴキブリと呼ぶ。そのことを、僕は一瞬で思い出しました。
こいつがゴキブリか。
大きさを説明しましょう。
正直、大きくはなかったです。2センチ弱くらいでしょうか。身体も細長く、圧倒的な脅威を感じるほどではありませんでした。
更にいうと、そいつは黒ではなく、茶色でした。チャバネゴキブリと呼ばれるヤツです。白か黒かでいえば、僕にとっては紛れもない黒ですが。
動けなかったな。
鳥肌が立つとか、叫び声を上げるとか、反射的に距離を置くとか、そんなこともなかった。
身体のあらゆる反射機能が不全を起こしたんだと思う。わざと呼吸をし、何とか立ち上がってマイナス85度の凍死スプレーを手にしていました。
戦う覚悟ができる前に、戦いを挑んでいました。
いや、戦いとは少し違いますね。
こいつと戦ってはいけない、そう思ったんです。
だから戦いになる前に、こちらが一方的に蹂躙し、最初から何もなかったことにしなければならない。
僕は息を二回止め、ひと思いに白い霧を撒き散らした。
これは戦いじゃない、一方的な蹂躙でなくてはならない。
これは戦いじゃない、一方的な蹂躙でなくてはならない。
これは戦いじゃない、一方的な蹂躙でなくてはならない。
これは戦いじゃない、一方的な蹂躙でなくてはならない。
ソイツは、意図も容易くポロリと壁から離れ、絨毯と壁の隙間の床に転がった。
その瞬間、初めて僕はソイツから”反射的”に距離を取りました。
暴れる!と思ったんです。ただ、そうなってしまえば戦いになってしまっていたと、今になって思います。
ゴキブリは、殆ど動いていませんでした。マイナス85度をひと思いに浴び、体中の筋組織を氷付けにされたんだ、動けるはずもない。
僕は、精液を拭き取る時と同じくらいの枚数のティッシュで、ソイツを優しく拾い上げた。
正直、ゴキブリではなかったという可能性を信じていた。そんな可能性を信じることができる余裕があったのは、凍死スプレーを浴びたソイツが意図も容易く事切れたおかげだ。
そっと、ティッシュを開き、死にかけのソイツに目をやった。
確かに、目が合った。
こいつは、殺さなきゃダメだ。
この時、一人称は「僕」から「俺」へと変化した。
俺は、呼吸を止めたまま、思い切りティッシュを握りつぶした。そして、平べったくなったティッシュを、今度は角度を変えて握りつぶし、掌の、名前も知らない部位で更に押し潰した。
天井のシミのように平らになったティッシュは、今はゴミ箱の中に眠っている。
今もまだ、ゴミ箱からソイツが覗いているような気がしてならない。はたまた、ソイツの仲間が、ソイツと密接な関係をもつ何かが、捉えきれない隙間からこちらを睨んでいるような気がしてならない。
11月最終日。これからが冬の本番だというこの時期に、なぜソイツが俺の前に姿を現したのかは分からない。
だがこれで、安寧の日々は終わりを告げた。
これからは、不安と焦燥の日々が始まっていくんだ。
俺は、寒そうにさえずる鳥の声を聞きながら、そっと筆を置く。
パソコンだけど。